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相続の中に借金があった場合の対処法

相続人調査と相続財産の調査のページでも触れましたが、被相続人の遺産を相続する際、プラスの財産だけでなくマイナスの財産を引き継ぐことがあります。
通常、何も手続きをしないまま、遺産を相続することを単純承認といいます。
単純承認した場合には、借金などの債務や、連帯保証人など、保証人の立場もまた、相続することとなります。

 

しかし、ケースによっては借金がプラスの遺産より多かったり、多額の金額であることがあります。
被相続人の残した借金を相続したくない場合、どのような対処法があるのでしょうか。
今回はマイナスの財産であった場合の対処法を確認していきましょう。

 

【遺産に借金があった時の対処法】
遺産の中にマイナスの財産があった場合、主に以下の2つの状況が考えられるかと思います。

 

① 遺産が明らかにマイナスである。
② プラスの財産もあり、マイナスになるのかどうかがはっきりしない。

 

① と②の状況では、対処法が少し異なります。ではまず、①のケースから考えていきましょう。

 

■①のように遺産が明らかにマイナスだったとき
遺産がマイナスだった場合には、一般的に相続放棄を利用します。
相続放棄とは、相続開始(被相続人の死亡した次の日)から3か月以内に申請する手続きです。家庭裁判所に相続放棄の申し立てをおこなうことで、自身を相続人から外すことが出来ます。
相続放棄に必要な書類は自身と被相続人の関係によって異なりますが、共通して必要な書類は以下になります。

 

1、 被相続人の住民票除票、もしくは戸籍附票
2 、相続放棄をおこなう人の戸籍謄本
3 、相続放棄の申述書
4 、800円分の収入印紙
5 、郵便切手

 

以上が申し立てをおこなう上で、必ず必要となるものです。
なお、5の郵便切手は申請する家庭裁判所によって、金額が異なる場合があります。
そのため、手続きをおこなう際には事前に確認しておいた方が良いでしょう。

 

では、次に相続放棄の簡単な流れについて説明していきましょう。
まず申し立てをおこなう裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄している裁判所となります。
こちらに、相続放棄の申述書とともに、1~5までの書類や、別途被相続人との間柄で必要な書類をいれて、裁判所へと提出します。
提出方法は直接裁判所へ出向くか、郵送か、どちらかの方法を選択できることが出来ます。
ただし、裁判所によっては郵送を受け付けていないところがあるので、事前に確認をしておくことが大切です。
相続放棄の申し立て後、しばらくすると裁判所から、照会書という書類が送られてきます。
照会書には裁判所からの質問が記載されており、こちらに記載された質問に答えて返送します。
照会書の回答に問題がなければ、大抵照会書を送付してから1週間から10日ほどで、相続放棄申述受理通知書が送られてきます。
こちらの通知書が届いたら、相続放棄の手続きは完了です。
ただし気を付けていただきたいことは、先ほども申し上げた通り、申請する方と被相続人の方の間柄によって、用意する書類が違うことがあります。
用意する書類が違っていたり、また所轄の裁判所を誤ったりすると、相続放棄の申請期限である、相続開始3か月以内に、手続きが完了できず借金を背負ってしまう可能性があります。
しっかり確認をおこなって、不備がないようにすることが1番ですが、期限に余裕を持って申し立てをおこなうことも大切になってきます。

 

■②のように遺産がマイナスかプラスかはっきりしないとき
遺産がマイナスか、プラスか分からないときには限定承認という方法もあります。
限定承認とは、相続放棄と同じく相続開始から3か月以内におこなう手続きです。プラスの遺産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぎ、そのうえで、プラスの方が大きければその遺産を相続します。
反対にマイナスの財産が、プラスの遺産を超過している際は超過分の負債を追わずに済むのです。
では、限定承認をおこなうにはどのような書類が必要になるのでしょうか。
限定承認の必要書類は、相続人と被相続人の関係によって異なります。
共通して、必要なものは以下です。

 

1 、 限定承認の申述書
2 、被相続人の出生時から死亡時までの連続した戸籍謄本
3 、被相続人の戸籍除票、もしくは戸籍附票
4 、申述人全員の戸籍謄本
5 、収入印紙800円分
6 、郵便切手

 

以上が共通して、必要な書類などになります。
相続放棄は相続人単独で申し立てをおこなうことが出来ますが、限定承認は、相続人全員が共同で申し立てをしなければいけません。

 

では次に、限定承認の基本的な流れを見ていきましょう。
まず限定承認の申述書を家庭裁判所へと1~6の書類と別途必要な書類とともに提出します。
次に限定承認の申述の受理から5日以内に、相続人が債権者へ請求申出の公告を出します。
請求申出の公告とは、被相続人の債権者に対して、「名乗り出てください」というお知らせのことです。
なお、限定承認の申述人が2人以上いる場合、相続財産管理人を選定するいつ用があるため、申述書の受理から10日以内に請求申出の公告をします。
付け加えると、相続財産管理人に選定された場合、財産を管理するための口座も開設する必要がある場合もあるのです。
また、債権者が把握できているときには催告を出します。催告は債権者ひとりひとりに出すかたちです。
公告に関しては、近くの官報販売所にて手続きをして、2か月以内に申出がなければ、債権の弁済から排される旨も一緒に記します。
ただし、催告を出した債権者に関しては、2か月以内に連絡がなくとも除斥されることはありません。

 

請求申出の公告後、2か月が過ぎたら届け出のあった債権者に対して、その債権に見合った割合のお金を割り振ります。
返済しても残った金額に事を剰余財産と呼びます。公告から2か月以上後に、申し出た債権者や相続人が把握できなかった債権者に対しては、剰余金の限りで返済をするかたちです。
それでも剰余金が残ったならば、プラスの財産となりますが、他にも債権者がいることを考えて、使わない方が良いかもしれません。

 

以上が、遺産に借金があった時の対処法となりました。
相続放棄は、限定承認に比べれば比較的簡単に進められる手続ですが、一度申請をおこなうと特別な事情がない限り、取り消しが利かないため、本当にマイナスの財産なのかしっかりと財産調査をすることが重要です。

 

とはいえ、遺産に借金がある場合の対応は期間も短いこともあって難しいこともあるかもしれません。
そんな時には専門家の力を借りることを考えてみても良いかもしれません。

 

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  • 代表弁護士

    宗川 雄己(むねかわ ゆうき)

    所属団体
    京都弁護士会
  • 経歴
    平成15年 洛星高等学校 卒業
    平成21年 京都大学法学部 卒業
    平成23年 同志社大学法科大学院 卒業
    平成25年 弁護士登録、執務開始
    平成30年 ムネカワ法律事務所 設立

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